お布団大好き

推しへの愛の備忘録

推しが一般人になった話

さて、私というのは実に飽き性なもので1年近くこのブログから距離を置いていた。

1年という月日は、周りの環境を変えるのには十分な時間であり、私自身の環境も例に漏れず変化があった。

 

まず、恋人と別れた。

まあ別れた、なんて言っても半年も経たずにまたよりを戻したのだけれど。

20年生きていて誇れるような男性経験はないが、一度別れた人とまたよりを戻すというのは初めての経験で、阿呆らしいなと思いつつこんな阿呆らしい恋愛に本気になれるのも今のうちだと思い、なんとか今につながっている。良くも悪くも、若いとはこういうことをいうのではないのか、なんて思ったり。

 

そして、推しが一般人になった。

 

 

推し、と言っても1年半程しか応援できなかったのだが、その1年半はやはり私の中で最も濃い1年半で、これからも忘れることはできない年月だ。

私がその事実を知ったのは10月だった。毎日ブックマークしていた推しのサイトを見ていて、ふと事務所の公式サイトを見に行った時。いつもならトップページの所属俳優の欄にいる推しの姿がない。正常に読み込めていないのかと思いもう一度開き直すも変化なし。瞬時に指先の血液が冷え切る感覚に陥り、事務所のサイトをくまなく探して見るもどこにも推しのページは存在しなかった。それだけでなく、推しの退所についての情報も見当たらず、私はいつか呟いた自身のツイートを思い出した。

 

 

 

目の前が真っ暗になる、というのを初めて体験した。

ショックが大きすぎて、涙が出るより先に胃がキリキリと痛んだ。

 

その後、しばらく形容しがたい虚無感に襲われながら日々の生活を強いられ、笑うことはできるし会話もできるけど、体の中心に拳くらいの穴が空いたような、気持ちの悪い感覚が拭えなかった。推しはこんなにも唐突にいなくなるのかと思うと、もっとたくさん手紙を送ればよかった、とかもっと派手に応援していたら、とか今となってはなんの意味もない後悔だけが爪先からじわじわと伝い、自分が恥ずかしく思えて後悔している事実から目を背けていた。

 

それから数日後、忘れもしない10月16日。

母親から、私宛に手紙が届いていると渡された封筒は少し厚みがあって、ちょっとだけ不恰好な字体で私の名前と住所、そして裏面に推しの名前が書いてあった。

実は、昨年の同日に私は推しから初めて手紙をもらった。誕生日に送ったプレゼントと手紙のお礼が剥がせるタイプのハガキに記されていた。ただ純粋に嬉しかった。推しが生きている間に、私のためを思って私のために手紙を書く時間を作ってくれたという事実が、本当に嬉しかった。

2度目の手紙も、もちろん嬉しかった。それと同時に、なんとなく空いた穴が小さくなる感覚がした。封筒を開けると2枚、花柄の便箋が入っていた。今回の手紙も誕生日プレゼントと手紙のお礼、そして事務所を退所して今は別の人生を考えているというような内容が書かれていた。1行ずつ読みながらぼろぼろと泣いてしまい、いきなり泣き出した私を見て母親がぎょっとしていた。

手紙の途中には、私のような人に応援してもらって俳優をやっていてよかったと思えた、と書いてあり改めて彼のことを好きになってよかったと思った。そんな風に思ってくれて、ありがとう。

そして、彼に自分が認知されていたことも手紙で知ることができ、やっぱり彼は俳優としても人としても本当に素敵な人間なんだと痛感した。一度も会ったことのない1人のファンのことを少ないプレゼントと手紙で覚えていてくれているなんて。彼の記憶に私の存在があることが死にそうなくらい嬉しかった。

 

きっと、今後彼が俳優としての道に戻ることはないだろう。もし戻ることがあったならまた私は応援するし今度は後悔のないようにたくさん手紙を送ろう。でもそんな未来は恐らく実現しない。彼は一般人になった。今までできなかった「普通」の日常を思う存分楽しんでほしいと思う半分、もう彼が演技をするところが見られないと思うと悲しい気持ちになる。だけど、わざわざ事務所を退所してなお手紙を書いてくれたのは、彼の中で私が特別な存在だったということなのかもしれないと、自惚れたりもしている。本当に充実した1年半だった。こんなにも人を好きになったのは生まれて初めてだった。唐突な一目惚れから始まり、短い間だったけれどたくさん君のことを知ることができた。俳優になってくれてありがとう。

 

彼が送ってくれた手紙はある地方から届けられていたのだけれど、書かなくていいところを書いてくれたのは、きっとこれからここで新しい道を歩むという彼なりのメッセージかもしれない。大丈夫、君なら絶対この先の人生幸せなことがたくさん待ってる。だから絶対幸せになってね。

 

こうして私の推しは一般人になった。今でもやっぱり寂しいけど、彼の芸能人生の最後を見届けることができたのならば、それはファン冥利に尽きることなのではないのかと思える。最後まで推しは素敵な人でした。

推しはいつまでもいるわけではない、とこの一件でひしひしと感じた。今大好きな推しがいる人はぜひ、今この瞬間を大切にしてほしい。

 

 

 

大地くん。

最後のお手紙ありがとう。お返事を送ることができないのが寂しいです。

君が事務所を退所したのを知った時、本当に本当に悲しかった。でもこうしてお手紙を頂いたことでちょっとは前を向けるようになりました。最後まで素敵な思い出をありがとう。

君のおかげで人生が本当に楽しくなりました、本当に。

これからも体に気をつけて、美味しいものを食べて楽しく幸せに過ごしてください。

 大好きです。

 

「楽しく生きてこ!元気でね!!」